室町時代に御伽草子などの庶民的文芸が興るとともに、それにふさわしい絵入写本が多く作られた。それが奈良絵本であるが、奈良絵本という名称は明治期に古書肆の間で使われ出したものらしく、由来も明らかでない。はじめは従来の絵巻形式であったが、やがて扱いの簡便な冊子本が現れ、この方が主流となって、江戸時代の享保ころまで製作が続いた。冊子本には、大形本・横形本・半紙本(中形縦本)の3種があり、横形本が最も流布した。
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展示品
北野天神縁起に発する菅原道真が時平と対立し、内裏に放火したという濡れ衣を着せられて、遠流の末に配所の大宰府で薨(こう)ずるや、怨霊が都に上がったというところから下巻が始まる。濁点が打ってあるのは後人の所為であるが、奈良絵本としては、本文の筆蹟よりみてやや古い書写にかかり、室町末期には遡りうるであろう。絵も、それぞれに稚拙ではあるが、古雅であるといえる。
平安後期成立の『狭衣物語』より、飛鳥井姫と狭衣大将(ここでは中将)とをめぐる話を抜き出し、御伽草子に仕立て直した作品。紺色地に金泥にて秋草や水辺の景を描いた紙表紙の横本。諸本により同異があり、五系統に分けることができる。中巻の二図が切り取られて失われている。絵などは比較的丁寧に描かれている。
会期:2023年6月26日(金曜日)~7月8日(土曜日)
会場:鶴見大学図書館 エントランスホール(入館ゲート前)
開館時間は図書館ホームページのカレンダーをご確認ください。
入場無料。学外の方も展示をご覧になれます。入館時はカウンターにお声がけください。