本学で実施されている私立大学戦略的研究基盤形成支援事業は文部科学省から2015年に採択されました。本研究事業は私立大学の研究基盤の形成を目的に、研究プロジェクトに対して重点的かつ総合的に補助が行われ、わが国の科学技術の進展に寄与することが求められており、各大学が最先端の研究や地域に根差した研究などの観点から文部科学省が審査し、これまで決定されてきました。本学歯学部の研究課題名は「口腔の加齢制御を目指した集学的研究拠点の形成」であり、21世紀医療の緊急課題として長寿医療が担う責任は重大であることから、長寿科学研究の緊急課題として高齢者の様々な疾患の増加に如何に対処しうるのか、どのような具体的方策が可能であるのかを研究テーマとし各研究分担者が研究プロジェクトを遂行しています。
世界的にみても高齢者の口腔機能の低下を適切に評価し治療する方法に関してはいまだに確立されていません。従って、本学歯学部等の基礎講座と臨床講座の連携により集学的な研究を実施することで、口腔機能を維持し加齢に伴う口腔機能の低下を軽減ないし阻止することがこの研究課題の到達目標です。
本研究プロジェクトの外部評価は関連領域の有識者である慶應大学医学部の坪田一男教授、東京大学医学部の水島昇教授、広島大学歯学部の高田隆教授に委嘱し研究成果の中間評価が実施され、現在、積極的な研究活動が行われています。
口腔は生物としての生命維持に必要な咀嚼や摂食・嚥下という基本的機能を担うとともに、ヒトとしての根源的欲求である会話や味覚などの高次機能にも関与しています。このような口腔顎顔面領域の機能は加齢により障害され、その心身の病的変化はさまざまです。
口腔乾燥症を主症状とする自己免疫疾患の一つであるシェーグレン症候群や口腔粘膜疾患である再発性アフタ性潰瘍はじめ、心的障害や摂食・嚥下に関わる硬組織や筋組織の加齢変化は老化関連疾患:age-related diseases(ARD)として当該領域の難治性病態として位置付けられており、本研究プロジェクトでは本学に蓄積した病因・病態解析技術を集学的に駆使すると共に附属病院に集積した膨大な臨床検体を用いて病態解明から臨床研究への橋渡し研究を行うことを目的とし、基礎研究で得られた成果を臨床応用可能な知見にまで到達させるトランスレーショナルリサーチを実施します。このような取り組みは超高齢社会において極めて重要な検討課題であり、これらの病態解明や治療法を確立することの社会的意義は極めて大きいと考え、次世代医療への貢献を目指します。
斎藤一郎(歯学部病理学講座 教授)
2015年度 2016年 3月12日(土曜日)開催
2016年度 2016年11月 5日(土曜日)開催
2017年度 2017年10月 7日(土曜日)開催
2018年度 2018年11月17日(土曜日)開催
2019年度 2019年10月26日(土曜日)開催
■ 3年目の進捗状況を発表(中間報告)