大学案内タイトル

平成29年度卒業式式辞

Menu

 鶴見大学、鶴見大学短期大学部、および大学院・専攻科をご卒業、修了される皆さんが、この日を迎えるに当たり、一言お祝いのことばを申し上げます。また、日頃より温かいご支援をされてこられたご家族の方々にも、併せてお祝い申し上げます。 
 これから、社会人として巣立ってゆく皆さん!ご自身の生涯にどんな夢を描いて、どんな走りをするのでしょうか。皆さんの身近な方々は勿論、教えてこられた先生方も大きな期待を持って注目しております。
 ここで、これまで私自身が心に留めてきました言葉を贈りたいと思います。
 「天の将に大任を是の人に降[くだ]さんとするや、必ず先ず其の心志[しんじ]を苦しめ、其の筋骨を労せしめ、其の体膚[たいふ]を餓[う]えしめ、其の身を空乏[くうぼう]にし、行なうこと其の為さんとする所に払乱[ふつらん]せしむ」
 天が、ある人に大任を授けようとする時は、必ずその人の身心を苦しめ、窮乏の境遇におき、何を行っても、すべてその人の為さんとするところに逆行するような不如意を敢えて与え、それを試練としています。将に「艱難汝を玉にす」。むしろその「苦」は有難く頂戴すべきではないでしょうか。これから皆さんが手掛ける仕事は、天から授けられた運命だけに、いかなる「苦」にもとことん挑戦して生きて往かなければなりません。それが生きる者の使命だと思います。
 「宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える」と言いますが、「源泉混混、不舎昼夜」、豊かな源泉から昼となく夜となく盛んに水が湧き出るように、日々精進、労苦を惜しむことなく使命に燃えてみようではありませんか。きっといつか、次の詩の中で相田みつをさんが伝えたい真意に頷けることでしょう。
「あのときの/ あの苦しみも/ あのときの/ あの悲しみも/ みんな/ 
肥料になったんだなあ/ じぶんが自分に/ なるための」
 そんな時、「希に一善を勤むといえども、多くは名聞の思いに穢[けが]される」と、心に刻んでおきたいものです。
 最近、不正や改竄が散見します。自分の評価・評判、他人の目を気に掛け過ぎていませんか。仏教で言われる慢という心所[しんじょ](心の働き)は、何も無いときは心の深層に沈んで眠っていますが、一旦賞賛というきっ掛けを得ると、心情は目に見えて高揚し、思い上がり、やがては自己を恃[たの]んで他を侮るなど、正真正銘の慢心に振り回されてしまいます。そこで、心しておきたいのが、「賢者は非難と賞賛とに動じない」という言葉です。
 最後に、相田みつをさんの詩を、もう一つ紹介して、私のお祝いの挨拶とさせていただきます。
「長い人生にはなあ/ どんなに避けようとしても/ どうしても通らなければ/ 
どうにもならぬ道/ というものがあるんだな/ そんなときはその道を/
だまって歩くことだな / 愚痴や弱音を吐かないでな/  黙って歩くんだよ/
ただ黙って / 涙なんか見せたらダメだぜ/ そしてなあその時なんだよ/
人間としてのいのちの/  根がふかくなるのは」
 

 

 

平成30年3月14日  大山 喬史