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平成30年度入学式式辞

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型の体得 学びの原点:「守」・「破」・「離」

 鶴見大学、鶴見大学短期大学部、そして研究科、専攻科の新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。皆さんの日頃の努力が実って、この鶴見大学に入学されましたことは、皆さんの誇りでもありましょう。また、こうして皆様をお迎えできますこと、私どもも大変うれしく存じます。頑張られた皆さんに、そしてこれまで皆さんを支えてこられた御家族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。
 鶴見大学は、曹洞宗大本山總持寺によって創立された大学であり、その建学の精神の由る処は、仏教、殊に禅の教えに基づいて、天地創造に由り生命を授けられた全てのものに、深い慈愛と感謝の心を以って接し、報恩の実践躬行できる人間形成にあります。本学の創設に深くかかわられました中根環堂先生は、この精神を「大覚円成 報恩行持」の二句八字を以って示されました。
 本学で学ぶ皆さんが、優れた智慧と豊かな心を具えた真人として、明るい未来の創造に貢献できる存在へと成長されますことを、心から願っております。
 さて皆様のご入学に当たり、一言申し添えたい言葉があります。それは型の体得、学びの原点ともいわれる「守」・「破」・「離」という、茶道・江戸千家の指針ともなっている言葉です。これを皆さんの大学生活に当て嵌めて、考えてみます。
 守とは、守るであり、先生から基本的知識や技術を学生さんが学ぶこと。そこでは、知識や技術を身に付けるのに忙しい低学年の身で、「下手」という段階。次に破とは、破るであり、高学年になると、習ってきた基礎的知識や技術に自分なりの「考え」を加えて、守の枠を飛び出し、「下手」の域から「上手」への段階。最後に離とは、離れるであり、最高学年、大学院に進んで、「思案・思索」、さらに「創造」が加わって、終には、自分の新境地「離」の段階に到達。そこで頑張って登り詰めれば、名人の位に到達するということです。しかし、名人に至る「離」といっても、 あくまでも「守」と「破」の双方がその機軸であり、「離」の両輪としてあり続けるわけですから、「守」や「破」の段階で、“自身の研鑽に骨身を惜しむ”ではいけません。殊に、狂言師:野村萬さんの言葉、「基礎となる型は知識でなく体得するもの。型にはめるのは没個性のように考えがちであるが、使いこなすうちに型は様々な個性や表現となっていく」。そして、浅利慶太さんの言葉、「人は誰でも努力していれば、いつまでも下手のままでいるわけにはいかない」には、励まされます。それなら、やってみようと思いませんか。
 最後に、坂村真民さんの詩を紹介して、私のお祝いの言葉とさせていただきます。

本気になると 世界が変わってくる 自分が変わってくる
変わってこなかったら まだ本気になっていない証拠
本気な恋 本気な仕事
ああ 人間一度 こいつを つかまんことには

平成30年4月5日 大山 喬史